MBD(モデルベース開発)とCPQ

MBD(モデルベース開発)とCPQ

情報技術関連の「バズワード」とはまだなっていませんが、技術動向をウオッチしている皆さんに気にして頂きたいキーワードとして「MBD」があります。実は、この古くて新しいキーワード「MBD」は日本再興戦略の中でも散見するマスカスタマイゼーションやCPQのコンセプトとも関連性の高いキーワードです。今回はこの「MBD」というキーワードを改めて、おさらいをしておきたいと思います。

なお、経済産業省では、この「MBD」を最近公開されたレポートで「開発プロセスにおけるIT活用」であるとしています。また、同省では、この新しい開発手法を日本の自動車業界の国際競争力を高める為の施策として、2018年4月より高度化する「SURIAWASE2.0」を進めるための検討を業界全体で行うようを働きかけをしていますので、今後注目すべきキーワードと筆者は捉えています。

というわけで、今回は日本の基幹産業である自動車業界を例として、MBDの実態と、日本とドイツでのMBDの普及状況の進度の違いについてご紹介し今後の製造業でのIT導入の余地について考えてみたいと思います。

日本でもMBD検討が本格始動

MBDとは、Model Based Design :モデルベース開発のことで、決して新しいコンセプトではないのですが、日本ではあまり馴染みがないと思います。その理由の一つにMBDとは対極にある「擦り合わせ(統合とも言われる場合があります)」という設計文化があります。日本の基幹産業である自動車製造業では、この擦りあわせによる製品設計、部品設計が現在でも行われています。

ところがドイツから始まったIndstury4.0などに代表されるような「第四次産業革命」によって、これまでのような属人的な調整と統合に頼っていた最適化モデルは世界的な潮流から取り残されてしまう懸念が出て来ています。ドイツの例が特に参考になるので、その例をひとつ紹介してみましょう。

自動車メーカーとして知られているVW(フォルクスワーゲン)グループでは、今後も伸長すると予想されている自動車市場に対して、これまでの生産工場の生産設備で顧客の様々な要求に応えられる生産方式である「マス・カスタマイゼーション」を実現するために製品カテゴリー別に独自のモジュール化設計を導入していることも知られています。

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もうひとつ、日本個別の問題としては、設計や生産技術などのエンジニア領域でのエキスパート人材の減少や働き方改革の進展により、これまでのような限られたエキスパートたちの極端な労働時間の投入による設計作業が出来ない状況(言い換えれば、技術者が早く帰宅することで知的生産性が低下すること)になっているという点もあると言われています。

そんな中、日本では経済産業省が中心となり、2018年4月より、自動車産業(最終製品だけでなく部品メーカも含む)向けにMBD(モデルベース開発)を普及するための日本流MBDである「SURIAWASE2.0」を進めています。

この「SURIAWASE2.0」は、経済産業省が自動車産業の国際競争力をより高めるため、平成27年11月に「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」を設置し、我が国のサプライチェーン全体で、企業間のすりあわせ開発を、実機を用いずバーチャル・シミュレーションで開発を行う「手法(この範疇をMBDと定義している)」により高度化を進める構想とされています。

また、日本国内での企業間格差が有り、海外企業との競争力という意味では課題となっています。一部の自動車メーカでは部品の材質レベルまでのMBDが進む中、日本におけるMBDの普及はこれからが本番というところでしょう。

ドイツの状況

先のVWグループの事例では2010年前後にプラットフォーム戦略からモジュール化設計戦略が進展して、現在日本で進めようとしているSURIAWASE2.0のような「手法」は既に実践済みで有り、その上で更なる製品のモジュール化を推進しています。

ここで改めて、MDBという「手法」とモジュール化設計という「概念(コンセプト)」について整理してみますと、自動車という製品設計の新しい概念として、モジュール化設計が有り、それを実現、実践する手法としてMDBという手法があるというように筆者は理解しています。

ドイツ政府が推進する製造業のデジタル化・コンピューター化を目指すコンセプトで有り、国家戦略的プロジェクトである「Indestory4.0」は2011年には発布されていましたが、VWグループでは、その追い風も有り、グループ内の主要な車種に対して、MDBの手法を含んだモジュール化設計の概念を展開しています。それが、MQB(英訳:Modular Transverse Matrix)に代表されるVWグループのポストプラットホーム戦略であるモジュール化戦略になるわけです。

VWグループでは、このモジュール戦略は設計分野だけではなく、製造分野でのモジュール化によるメリットを享受しています。それは自社の自動車生産ラインの設備と作業方法の共有化です。プラットホームの共有化戦略の時と比較しても多くの設備共有化や作業方法の共通化を実現していることが知られています。同グループでは、更なる発展を計画しており、MQBに続く新たなモジュール化戦略をVWグループであるAudiブランドにもMLBとして展開中です。

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MBDとCPQの関係は

先のVWグループにおけるMBDの事例でも設計、製造、販売という大きな業務プロセスでみた時に、CPQがITとして関連する業務は実はその全てのプロセスになります。CPQの名前から見積書や製品仕様書などを様々な条件選択と制限から導き出して来るだけの営業支援システムのイメージがありますが、実はMBDが深化している企業では設計システム(CADやPDMなど)と連携して、顧客からの受注情報からオプション部品のCADによる製図とエンジニアリング用の部品表の作成から、作業指示が出せるような製造用の部品表の作成まで顧客要求仕様を基にして自動生成するところまでをCPQを利用して実現しています。

VWグルーブのAudiブランドでは、既にCPQを利用した顧客向けのマスカスタマイゼーション を実現した新車用のECサイトがありますが、そこでは数千通りのAudiを自分の好みの仕様で見積りすることが出来ます。ここまでの機能であれば、日本の自動車メーカでも同様のことがすでに実現していますが、Audiでは、そのお客様仕様で直接製造工場に注文することが出来てしまいます。

以上のような自動車産業に限らず、モジュール化された製品設計から生産、販売までの「企業内のものづくりのプロセス」に対して部品表を通じたデータ統合管理が可能なCincom CPQ™には様々なメリットがあります。一般的にCPQというと営業部門に多くの導入メリットがあるように思われますが、CPQのROIはそれだけでなく、設計部門による製品構成決定プロセスやそれを基にして製造向けの部品表の生成や、営業部門が顧客に提出する見積に利用する販売部品表などすべての部門に対して生産性の向上をもたらすことでしょう。

CPQで営業プロセスに限らず、設計部門や製造部門での業務効率をアップしたいなどのニーズをお持ちの方は、ぜひCincomまでご相談ください。

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