ERPとCPQの統合が組立製造業で大幅な業務効率化を実現できる理由
はじめに
競争の激しい製造業では、多様化する顧客のニーズやグローバル化の高まりに適応するために多品種少量生産のマスカスタマイゼーションに対応していこうという動きがあります。ETO(Engineer To Order)個別受注生産だけでなく、BTO(Build To Order) 受注組立生産も同様です。
全体の最適化のため、大企業などではPLM(Product Lifecycle Management)、ERP(Enterprise Resources Planning)などを導入しているところも多いでしょう。しかしこれらは導入しただけでは十分ではありません。営業プロセス、設計プロセス、生産プロセスの連携の強化が必要です。
本ブログでは、マスカスタマイゼーションを実現するために解決するべき製造プロセスの最適化に立ちはだかる壁や、営業プロセスで起こる課題とそれを解決するCPQのご紹介、そしてERPやPLMとCPQを統合するメリットについて解説します。
製造・販売プロセスの最適化を阻む壁
工数削減や利益の最大化のために各部門でそれぞれ大きな費用をかけてシステムを導入しているものの、思ったほど成果が出ていない、システム導入自体が目的になってしまっていて全体の最適化に至っていないなどの状況に陥ることがあります。設計部門ではPLM、生産部門ではERP導入を進めるなど、部門最適で導入した結果、システムが分断されてシームレスに連携できていないことが多いのです。
具体的なシチュエーションで例を挙げると
ETOの製品は受注内容ごとに仕様が異なります。BTO製品もお客様の特注品のオーダーに応えるために必要な場合にエンジニアリングを行います。
営業部門、設計部門、生産部門それぞれが使うBOM(部品表)の粒度が異なります。営業が見積作成で使う項目では1つの品目でも、設計段階や生産の現場では部材単位に分解されるなど粒度が細かくなってきます。それぞれの部門が使うシステムが異なると連携が難しく、ミスや手戻りなどが増える要因となります。仕様変更などが生じた場合、設計部門はE-BOM(設計部品表)を更新しますが、情報が五月雨式に伝わったり、連絡手段がまちまちだと変更内容がM-BOM(製造部品表)にタイムリーに反映されず、生産部門が変更前に作業に着手していたら手戻りが生じてしまいます。こうした要件も複雑で変化の激しいETOやBTOの製造業では、システム間をシームレスに連携することが必要です。
部門間の連携の重要性
大型機械などでは、調達部品の数や工程手順などが多くリードタイムも長くなりがちです。例えばAという部品を1つ作るためには、部品B1個、部品C2個、部品D2個が必要になるとしたら、Aの製造量に必要な分のB、C、Dの在庫が揃っていなくてはなりません。顧客の納期の要望に応えるために、部品の在庫管理や調達、受注品別のM-BOMの更新など正確に管理する必要があります。
しかし、営業部門と、設計部門、生産部門のシステムが断絶していて、部門間の情報連携がうまくいっていない場合はどうでしょうか。営業部門から急な仕様変更についての情報が設計部門、生産部門に連携されていないと手戻りが多く発生します。もし生産部門が次にどのような発注が来るかを知ることができれば、サプライチェーンやその他の問題により納期遅れのリスクがある部品を営業部門に示すことができます。生産できない部品や調達に時間がかかる部品が含まれる可能性の高い見積があれば、予め先手を打って行動に移すことができます。
営業プロセスで起こる課題とCPQの役割
企業が営業(セールス)といった業務を行う上で、業務上の課題として多くの企業が抱えていることには次のようなことがあります。
- エキスパートの知識が利活用できていない|製品構成が複雑で、エキスパートの人がいないと見積が作成できない
- そのため、見積提出までにそのエキスパートが捕まらないと時間がかかってしまうという|セールスの応答速度の課題
- エキスパートの時間が取れないので、営業だけで作成するとミスが多く手戻りが多いという課題
- 加えて製品ラインや部品の改訂が多く、知識を常に更新していかなくては覚えられないという課題
こういった課題を解決するのに役立つソリューションがCPQです。CPQとは、「Configure Price Quote」の頭文字を取ったもので製品やサービスの構成仕様を決定(Configure)し、価格設定(Price)をして、見積作成(Quote) を行う一連のプロセスをサポートするサービスプラットホームのことです。(参照:CPQとは)
CPQを使って、専門家の持っている製品構成のルールや見積ノウハウ、提案判断をシステム化します。
システムのインテグレーション
営業部門でCPQシステムを使い、生産部門でERPシステム、設計部門でPLMシステムを使用する場合、システム間のインテグレーションをすることで、異なるエンタープライズシステム間でデータが流れるようになり、部門間の情報分断が解消され、それぞれのシステムのメリットを最大限に活用することができます。
CPQソフトウェアは、製品やサービスの提案や価格設定を自動化することで、営業プロセスの合理化を支援します。しかし、CPQソフトウェアは他のアプリと統合できるのでしょうか?他アプリと統合できない場合、すべてシステムを新規に入れ替えなければいけなくなりますが、営業チームにとって、新しいシステムを導入するのは一番避けたいことでしょう。
CPQならシステムを総入れ替えする必要がありません。CPQは既存のシステムと簡単に統合し、流動的なプロセスを構築することができます。
ERPとの統合
CPQソフトウェアは、SAP、オラクル、インフォアのようなエンタープライズリソースプランニング(ERP)ソフトウェアと統合することもできます。この統合により、在庫の把握や注文の管理が容易になります。また、注文プロセスを自動化し、リードタイムを短縮することも可能です。
PLMとの統合
複雑な製造業では、製品の設計、コンポーネント、材料、エンジニアリング仕様に関する詳細情報を管理するためにPLMシステムが活用されています。PLMとCPQを統合することで、営業チームは見積時に最新かつ正確なデータを得ることができ、組織的なリターンの増大と顧客満足度の向上を実現することができます。承認されたコストと製品の製造方法は、エンジニアリング・チームから直接提供されるため、CPQで実行されたコンフィギュレーションが有効であり、顧客の仕様に合わせて収益性の高い製造が可能であることが保証されます。最終的に、CPQとPLMの統合により、組織はカスタマイズされた正確で競争力のある製品を提供し、販売効果を最大化し、ビジネスの成長を促進することができます。
次の図は、Cincom CPQとPLM、ERP間の典型的なデータの流れを説明したものです。
SAPとのインテグレーションの導入事例
ある産業用空調機器メーカーは、CPQを導入し、現場から 工場までの部門間のプロセス連携を実現し、注文入力担当者の作業量を50%削減することに成功しました。 同社のサービスアーキテクチャは、Cincom CPQからの出力をXML 形式でSAP XIに取り込みます。このシームレスで拡張性のあるインテグレーションにより、IT部門は1日に1,000件の 注文を処理できるようになりました。
いかがでしたか。Cincom CPQ™はすぐに使える他システムとの連携フレームワークを提供していますので、営業チームはアプリケーションを切り替えたり、手作業に頼ったりすることなく、正確な製品構成、価格設定、見積を行うことができます。
Cincom CPQのインテグレーションフレームワークについて詳細は、こちらからお問い合わせください。
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