マス・カスタマイゼーションとは

マス・カスタマイゼーションとは

少品種多量生産により生産コストを下げる「マスプロダクション(大量生産)」、顧客の要望に応じて仕様変更を行う「カスタマイゼーション(受注生産)」。2つの生産方式を掛け合わせ、顧客の要望に応じながら大量生産を可能にしたのが“マス・カスタマイゼーション”です。

お気づきの通り、マスプロダクションとカスタマイゼーションの合成語となっています。

マス・カスタマイゼーションという生産概念自体は古いものではなく、1990年代前半には「マス・カスタマイゼーション革命─リエンジニアリングが目指す革新的経営(ジョー・パイン著)」にて、世に登場しています。

しかし、当時マス・カスタマイゼーションを取り入れている製造メーカーがどれくらいいたかというと、ほぼ皆無と言っていいでしょう。いち早くマス・カスタマイゼーションを取り入れたのが米デル社で、CPUやハードディスクなど、PCの主要部品ごとに数パターンの選択肢を用意し、顧客にWebサイト上で好きな仕様を選んでもらいます。受注後、基盤にCPUを搭載しハードディスクをつなぐなどして、完成品を組み立てるのです。

現在では、様々な製造メーカーがマス・カスタマイゼーションに取り組んでいますが、今になってそうした企業が増加したのは、やはりITソリューションの進化あってこそです。

今回は、こうしたマス・カスタマイゼーションの基礎について整理し、その意味を定義していきたいと思います。

マスカスタマイゼーションとは?

マス・カスタマイゼーションは大量生産と受注生産、2つの生産方式を掛け合わせた生産概念です。では、大量生産と受注生産にはそれぞれ、どのようなメリットがあるのでしょうか?

大量生産のメリット

  • 大量仕入れで製品原価を下げることができる
  • 出荷リードタイムを短縮できる
  • システム化によって生産コストを下げられる

受注生産のメリット

  • 顧客の要望に応じて細かい仕様変更ができる
  • カスタマイズされた製品という付加価値がつく
  • 在庫が少なくなる

このように、大量生産と受注生産では、それぞれに異なったメリットがあります。もちろん、デメリットも同様に違います。つまり、マス・カスタマイゼーションとは大量生産と受注生産を掛け合わせることでそれぞれのメリットを融合し、かつデメリットを補うことができる生産方式なのです。

マスカスタマイゼーションのデメリットとは

当然のことではありますが、マス・カスタマイゼーションにもデメリットはあります。

第一に、マス・カスタマイゼーションに対応すべく既存のシステム環境を刷新し、迅速かつ的確な受注処理と生産計画への反映、さらには仕入れリードタイムを短縮するための仕組みが必要です。ただしこの点についてはデメリットというよりも、“課題”として捉えたほうが良さそうです。

Cincom CPQ Solution Configurator
導入事例:シーメンス社

確かにシステム刷新などのコスト、業務的負担はかかるものの、マス・カスタマイゼーションを軌道に乗せることができれば、大きな問題にはなりません。マス・カスタマイゼーションを実現したいのであれば、デメリットというマイナスイメージで捉えるのではなく、課題と考えてください。

次に、「完全なカスタマイゼーションは難しい」ということです。

完全なカスタマイゼーションとなると、それはあくまで受注生産となり、大量生産としての側面を失ってしまいます。たとえば前述した米デル社の事例や、アディダスが提供する「mi adidas (マイアディダス)」のように、予め製品の基礎となる部品を揃えておき、その中から様々なバリエーションを生ませるというのが基本となります。当社の事例では、展示会用のブースの設計から見積、注文までの一連のサービスをB2Cで提供している「パケテン」のように顧客のカスタマイズ要求と提供するサービスの折り合いを顧客が見いだせるように予め製品の基礎となる部品を揃えておき、その中から様々なバリエーションを生ませるというのが基本となります。

(こちらの動画にはパケテンやBTOのパソコンの事例がございます)


つまり受注処理から仕入れを行うとなると、マス・カスタマイゼーションとしてのメリットを失い、完全な受注生産となってしまうのです。

企業がマス・カスタマイゼーションを実現する上では、こうした事実を理解した上で、自社がどういった生産方式を、そしてサービスを提供したいのかを明確にすることが大切になります。

HD社のマス・カスタマイゼーション事例

大型オートバイの代名詞といえばハーレーダビッドソン(以下ハーレー)でしょう。その無骨なたたずまいと、重厚感あるボディは世界中に多くの熱狂的ファンを持ちます。

ハーレーの魅力はその迫力だけでなく“カスタマイズ性”にあります。多くのハーレーファンが独自のカスタマイズを加え、世界に一つだけの自分のオートバイを造ることに精を出しています。

ハーレーダビッドソン社(以下HD社)はそんな自社オートバイの特性を理解した上で、マス・カスタマイゼーションを活用したサービスを提供しています。2011年、それまで純正オプションパーツを数多く製造・販売してきたHD社ですが、「Build your own bike」を立ち上げ、“初めから”カスタムオートバイを購入できるサービスを提供しました。(現在はサービス停止中)

顧客はシート、ハンドル、車輪、マフラーなどあらゆるパーツを独自に組み合わせ、自分だけのバイクを始めから手に入れることができます。

HD社のマスカスタマイゼーションを支えるのは“スマートファクトリー”

スマートファクトリーとは、製品工場内にあるラインやセンサー、そして様々な設備をネットワークに接続することで、データの一元管理によって生産におけるあらゆる情報を可視化するという生産概念です。製品の品質、生産状況などをシステムで管理することによって、システム化の恩恵を最大限に受け、かつ生産の効率性を最大限に高めます。

ドイツ政府が国家プロジェクトとして取り組む“インダストリー4.0”も、スマートファクトリーと同じ概念を持ちます。

HD社は、ペンシルバニア州に同社が保有するヨーク工場を、2009年~2011年にかけて刷新し、老朽化した工場をスマートファクトリーとして生まれ変わらせました。

顧客からWebサイトを経由してカスタム受注を受けると、対象のオートバイを組み上げるための部品リストが即座に取り込まれ、生産計画に反映。さらには自動化された生産指示で必要となる部品在庫を手配し、生産を実行する。といった一連の生産プロセスを、ほぼ自動化することに成功しています。これにより、顧客への納品リードタイムを2~3週間も短縮したそうです。

さらに、こうしたスマート工場への取り組みによって、HD社はヨーク向上の総面積を15万平方メートルから、6.5万平方メートルに縮小することにも成功したのです。

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まとめ

顧客のニーズは、多様化の一途を辿るばかりです。誰もが人と違うモノを求め、自分だけのオリジナルを求めています。情報化社会が進むことで、こうした傾向はより強くなっていくことでしょう。

つまり、次世代のビジネスを生き残る製造メーカーは、多かれ少なかれ顧客の要望に応じたカスタマイゼーションを提供しなければなりません。こうした変化に対応し、かつ企業として成長していくためのヒントが、マス・カスタマイゼーションなのです。

大切なことは生産ラインを細かくコントロールできるシステム化と同時に、多様化する顧客ニーズを正しくとらえ迅速に対応できるカスタマーインターフェースが求められている点です。

多数ある構成部品や製品バリエーションの中から、正確な組みわせ(構成)をガイドし価格を算出、各種関連情報も含めて見積書を作成するといった、購買の流れをスマートに処理する顧客インターフェースや機能が求められています。

ニーズがますます高まるマス・カスタマイゼーション時代の到来に向け、自社のサービスをどのように適合させるのか。マスカスタマイゼーションが事業成長の大きな鍵を握っていると言えます。

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