ウィズコロナ時代のセールスプロセス(2)

 2020.07.06  Osamu Urakawa

世界各国のウィズコロナ時代は足並みを揃えてスタートしたわけではないのですが、既に『ニューノーマル』として始まっています。そして、この新世界の中でも重要な経済活動である『営業行為(=セールスプロセス)』は、前回投稿した『ウィズコロナ時代のセールスプロセス(1)』でも記載した既定のセールスプロセスを基にして、AIやDXなどのICTをさらに利活用して、そのゴールはコロナ禍以前と同じでものあるが、セールスプロセス自体は以前のそれとは随分と異なり、更なるICTの利活用により、より進化したものになっているようです。そんな中、あまり日本国内での報道ではみかけない、中国のウィズコロナ禍での経済状況をガードナーがレポートしています。そのArticleを読んでみると、いくつかの成功事例を見ることができますが、その経済回復のキーワードとして、「ビジネスモデルの回復力」と「デジタルジャイアントとの連携」とそして、「自動化をうまく活用すること」を挙げています。

本稿では、この中国が如何にして新コロナに対応していたかということを鑑みながら、我が国におけるウィズコロナ時代での「顧客の新たな要求」を再定義して、この今時点での顧客要求と、それに対面する売り手(製品やサービス提供側)が新たなセールスプロセスとして提供すべき機能やソリューションについて提案したいと思います。

一抜けの中国は新コロナにどう対応したか?

我が国と中国を比較したときに、筆者が一番違っていると感じている点は電子マネーの普及率です。日本銀行が2017年6月に公表した「モバイル決済の現状と課題」によると、日本でモバイル決済を「利用している」と答えた人は6.0%にとどまったのに対し、中国の都市部の消費者を対象に行った調査では、回答者の98.3%が過去3カ月間にモバイル決済を「利用した」と回答しています。

この違いの背景には、中国では日本ほどクレジットカードの普及していなかったことなども挙げられますが、それよりも大きな理由として、中国における新進気鋭のそれも複数の優良な経営状態にあるIT企業の存在があります。所謂「デジタルドラゴン(BATなどに代表されるハイテク企業)」と言われる新興勢力たちが、大規模な社会インフラを構築していることも見逃せない理由となりそうです。つまり、中国でのイノベーションではこれらのIT新興勢力の存在があるということです。

また、その利用者側の変化、順応性の高さにも注目すべきでしょう。総務省によると、中国においては、スマートフォンの利用者が激増しており、保有数は2011年の2億台から2017年(3月末)には10億7000万台1と、5倍強増加したというでした。利用者(購買する側)の数の変化、道具の変化(スマートフォンの利用)も大きく影響しているように見られます。

    ビジネスモデルの回復力(BMR)という視点

先に引用したガードナーの記事でも「ビジネスモデルのレジリエンス(回復力)BMR」について言及していますが、このBMRという考え方が、ウィズコロナ時代の事業継続には重要ということになりそうです。つまり、ウィズコロナ時代のビジネスモデルというものを新たに策定することでなく、既に構築されているビジネスモデルの事業継続フレームワークをまったく無視することはできませんので、これまでのビジネスモデルを継承しつつ、ウィズコロナ時代にも有効なビジネスモデルへとしなやかなに(ここが重要です)回復させることができそうです。それでは、いち早くBMRを示した中国の企業ではどのようなことが行われていたかを見てみたいと思います。

    デジタルジャイアントとの連携

中国におけるデジタルジャイアントとは、BAT*に代表される中国のハイテク企業群をさしますが、ガードナーの記事では、映画配給企業であるHuanxi Mediaのコロナ禍での成功事例(映画館の閉鎖に伴う数百万ドルの損失をTikTokで有名なByteDanceとの連携で91百万ドルの広告収入を得た)について報告しています。このデジタルジャイアントとの連携という意味は、その連携先として、日本ではまだあまり良く知られていない新たな事業者が複数ありますので、デジタルジャイアントとの連携によるBMRの成功事例は今後も増えて行くことでしょう。

*BAT(バット)は、中国の大手IT系企業3社である、Baidu(百度、バイドゥ)、Alibaba(阿里巴巴集団、アリババ)、Tencent(騰訊、テンセント)の頭文字を1つずつとった語でこれらの企業の総称。wikipediaより引用

    自動化の上手な活用

コロナ禍のセールスプロセスの成功事例として、ガードナーの記事では、中国民生銀行の「融資申請プロセス自動化」の例を挙げています。パンデミック発生後の殺到した事業資金ローンの申し込み業務プロセスの自動化の事例です。日本の現状からは想像できないかもしれませんが、この中国民生銀行では、複雑な融資審査の業務プロセスを30分までに短縮した事例です。
(ホームページでは、ローン手続き全体でも最長8営業日で実効可能と言われています)

また、この記事で興味深かったのは、コロナ禍での自動化のプロジェクトに新たなメンバーで取り組むよりは、既存のメンバーで取り組むこと、そして、自動化の対象となる範囲はその業務のすべてではないという点でした。私見ですが、すべての属人的な業務プロセスを自動化することが目的になってしまうと、自動化プロジェクトの全体の成否やカットオーバーのタイミングに大きく影響すると思いますので、サービス提供側の我々としても注意が必要と考えております。

シンコムでは、このような業務プロセスの短縮化については、ITツールを使った成功事例がいくつかありますので、ご興味があればご覧ください。

マスカスタマイゼーション時代を支えるCPQソリューション
Cincom CPQ Solution Configurator

ウィズコロナ時代の顧客要求

中国での成功事例の共有事項として、デジタルジャイアントととの連携と業務の自動化を挙げていますが、それは一見プロダクトアウトな「システム化のソリューション」のように思えるが、逆に顧客視点で見た場合、具体的には、どのような顧客要件があったのでしょうか?

中国民生銀行の業務自動化の背景にあった顧客要件とはどんなものかを「クイックローン」という新サービスのホームページでの記載に以下のようなキャッチコピーがありました。

『人々の生活のためのクイックローン、シンプルで迅速な「ローン」開発』

以下はそのホームページからの引用文です。(中国語をGoogle翻訳で和訳)
中小企業の緊急の資本需要を満たすために、中国民生銀行は一連の「クイックローン」商品を立ち上げました。地域経済的に活発な北京-天津-河北省、長江デルタ、珠江デルタ、成都-重慶経済圏などの場所を先導し、住宅ローン、工場ローン、ショップ向けローン、保証ローン、株式担保ローンおよびその他の関連商品を次々と立ち上げ、企業に柔軟かつ包括的なサービスを展開しました。

このホームページにも記載があるように、「ローン承認プロセスを最適化し、申請から承認までの時間を最大7営業日に短縮した」としており、これらは業界をリードするレベルに到達しているのだとしていました。

これは確かに、「サービス提供側のWebサイトの宣伝文句」ですが、中国民生銀行が地域的にも業種的にも広範囲にわたるローンサービスを開発する(した)ことを高らかに商品紹介の一文として掲げているところが興味深いところです。何よりも感心することは、顧客が求めるいる最重要要件である「迅速な対応」に対応するべく、中国民生銀行という既存のフレームワークを通じて、ソリューションとして短期間で実現し、提供しているという事実です。

日本における制度や体制のことを憂いても仕方がないのですが、「民生銀行」という金融フレームワークを利用して、コロナ禍の影響で落ち込んだ経済状況を迅速にレジリエンス(回復)させるための新規ビジネスモデルを実行に移していることが、中国の政府高官らが「一抜けをした」と言わしめる中国の実力なのかもしれません。

コロナ禍の影響で経済が疲弊している日本でも、この「迅速な対応」は、最大の顧客要件であり、サービス提供側が最も優先すべきサービス提供に際しての重要なスタンスであり、顧客に提供するソリューションの重要な機能要件になるものと思われます。また、それを実現するためには、これまでのような属人的な業務の執行は人々のインターラクションが必要でしたが、ソーシャルディスタンスの視点からも今後はそれも難しいため、属人化された業務遂行からICTを利用した自動化が、ウィズコロナ時代には不可避であることは想像に難しくはないと思われます。我が国も、因循姑息なコロナ対応ではなく、一抜けしている中国の迅速な対応については、一度色眼鏡を外して、その真の価値を評価する必要があるように思われます。

営業プロセスを自動化で回復させる

前回にも記載したように、一般的には、営業プロセスを見直してデジタル化に取り組むためには、営業組織に限定したBPR(Business Process Re-engineering)に取り組むことが有効手段になります。しかし、現在求められるのは、早急に事業を回復することだとすると、中国のような前提条件(新たなIT基盤と自動化の利活用)が必要に思われます。しかし、もし、既存のIT基盤を利用する前提でソーシャルディスタンスを保ちつつ、これまでのビジネスモデルをしなやかに回復させるとしたら、その施策のキーワードは「セールスプロセスの自動化」ということになるでしょう。

デジタル技術とはつまり、営業プロセス効率化やコミュニケーション促進を図るためのシステムやICTツールを導入することなので、予算との兼ね合いを考えることも大切ですが、最近では、高コストなオンプレミス環境から即時開始可能なクラウドサービスへの転換によって急激な出費を抑制できるので、対象となる自社の全てのシステムやソリューションとなる様々なICTツールを視野に入れながら、営業プロセスのデジタル化、自動化を目指してみてはいかがでしょうか?

シンコム・システムズ・ジャパンでは、セールスプロセスの自動化のサポートをさせていただいております。ニューノーマルの時代にマッチした、デジタル技術を積極的に取り入れた「セールスプロセスのレジリエンス」を検討される際は、ぜひ一度ご相談ください。

導入事例:シーメンス社

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