営業支援システムに求められる5個の要件
営業支援システムは日々の営業活動を効率良くするだけではなく、営業業績分析や情報共有など、営業活動全般において重要な役割を持っています。しかし、営業支援システムを構築・導入したからといって、必ずしもその取り組みが成功するわけではありません。
成功事例を多く見る一方で、同様に数多くの失敗事例もあり、それぞれ共通する課題が存在します。
そこで今回は、営業支援システムの導入成功に向けて、求められる5個の要件について紹介したいと思います。
営業支援システムを構築する、あるいはパッケージ製品を検討されている方々へ少しでも参考になれば幸いです。
要件1.様々な角度からデータを収集できる
営業支援システムは商談管理や日報管理などによって営業活動を効率化する以外にも、営業業績を分析するためにも活用できるシステムです。ただし、そのためには様々な角度からデータを収集し、分析できるような機能が備わっていることが条件です。
下の表は、売上担当者ごとの前期売上金額、全商談合計金額、この2つから割り出した成約率と新規顧客率をまとめたものです。もしも前期売上金額だけに着目していたら、Dさんの成約率の高さと、Dさんが持っているかもしれない既存顧客への営業ノウハウに気付くことはなかったでしょう。
営業担当者 | 前期売上金額 | 全商談合計金額 | 成約率 | 新規顧客率 |
A | ¥150,000,000 | ¥300,000,000 | 50% | 70% |
B | ¥130,000,000 | ¥260,000,000 | 50% | 35% |
C | ¥100,000,000 | ¥260,000,000 | 38.4% | 50% |
D | ¥95,000,000 | ¥130,000,000 | 73% | 20% |
E | ¥80,000,000 | ¥120,000,000 | 66% | 30% |
分析というには、このように様々なデータを集め、そこから様々な仮説を立てることで初めて効果を持ちます。このため、営業支援システムには営業マンを様々な確度から分析できるだけの情報量が必要です。
また、見積や受発注システムと連携することで、正確なデータを取りまとめて集計することが可能になります。営業業務をサポートするシステムとの連携は、業務効率だけでなく、正確なデータ管理にも役に立ちます。
要件2.一般的な日報ではなく具体性を持った報告ができる
一般的な日報といえば、テンプレート化されたExcelに商談日次、時間、商談製品、面談者、営業担当者の報告とそれに対する上司の指示を記入するようなものです。しかし、こうした日報のほとんどは、日々の営業活動にさしたる影響は与えていません。むしろ、入力の手間がある分非効率さを生んでいると言えます。
日報を活用するよくある目的として「上司と部下の密なコミュニケーション」などを見聞きします。しかし、コミュニケーションは日報以外で取った方が、明らかに効率的です。
活用効果の高い日報というのは、商談内容に加えて競合はどこなのか、競合よりも優勢か劣勢か、勝因や敗因はどこにあるか、見込み客のニーズや予算は把握しているか、セールスのタイミングは合っているか、決裁者の確認は取れているかなど具体性を持ったものでなくてはなりません。
通常行われている営業業務として、提案、製品やサービスの仕様や構成の作成、見積作成、契約書作成など、多くの書類や業務を連携させて行う場合が多く、それらの状態を正しくチーム内に共有する事はなかなかできていないのが実情です。
CPQといったソリューションを使う事で、過去に似た提案や構成例を参考にして準備することや、実施内容をチーム内に共有することも容易に実現できます。
要件3.営業マンと管理職、両者にとって使いやすい
営業支援システムを導入した企業の中には、思うようにユーザーに定着せず、そのまま導入失敗に至ってしまったという非常に残念なケースがあります。経営者や幹部役員はこうした原因をシステムを使用しない営業マンに投げがちです。しかし、導入失敗に陥る原因のほとんどは、経営者などにあることを理解していただきたいと思います。
入力しない営業マンが悪いのではなく、入力したくなるような営業支援システムを構築・導入できていないことが原因なのです。
そこでまず大切なことは、営業マンがストレスなく入力しやすい画面にすることです。例えば日報管理画面では、商談内容など大まかな入力欄を作りテキスト形式での入力を強制するのではではなく、細かい項目を造ってプルダウン方式でリストから該当するものを選ぶ、という画面にすると日報入力へのストレスはグッと減ります。
営業支援システムがユーザーに定着しないもう一つの理由は、日報などに対して管理職が返答しないという場合です。こうした状態が続くとユーザーはシステム入力の必要性を感じなくなるため、システム離れが起きます。
また、日々の業務に密接した、効率をあげるしかけと組み合わせることで、営業の方の生産性を上げつつ、管理者が必要とする情報も収集できるといった、両者のメリットを考慮することも大切です。
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要件4.リアルタイムな情報を図や計器で表示する
「情報はリアルタイムでなくても後で集計すればわかる」稀にこうした考えを持つ経営者や情報システム担当者がいます。しかし、リアルタイムの重要性を理解していないことで、競合に追い抜かれるのは時間の問題です。
例えばECサイト事業を展開している場合、リアルタイムに情報を確認できないのは致命的です。ECサイトというのは刻一刻と変化する訪問者数や売上などをリアルタイムに確認しながら、舵取りをしなければなりません。
リアルタイムな情報を持たない経営は、天気予測を行わずに航海する一隻の船のようなものです。明日来るかもしれない嵐すら予測できないため、気付いた時にはあっという間に沈んでいるかもしれません。
そのため、営業支援システムにはユーザーが日々入力する情報を、わかりやすいユーザインターフェイスで提供されることが大切です。さらには、外出やリモートワークも多い営業職の方のために、モバイル対応ができていることも望まれます。
要件5.多彩な設定変更をユーザーが行える
営業支援システムに対する要件というのは、時間の経過と共に変化します。導入初期はニーズを満たしていたシステムも、ビジネスの成長や変化によって必要な機能やシステムの規模が変わります。
しかし、そうした要件変化へ柔軟に対応できる製品は多くありません。ほとんどの場合、要件変化が生じた段階で情報システムや担当ベンダーに相談して、要件定義を固め、機能追加などを行いします。
果たしてこうした要件変化への対応で、急激に変化するビジネスは待ってくれるでしょうか?答えは当然「No」です。
そこでユーザー自身が多様な設定変更を行えるよう、予め要件定義に組み込んでおくことをおすすめします。万が一要件変化が起きた際も、ユーザーが設定変更によってそのニーズを満たせれば、追加開発コストやその手間も発生しません。
常に変化するビジネスへ迅速に対応できるため、営業支援システムに限らず、追加開発や新規機能のリリースが容易であることは、システム要件として非常に大切です。
まとめ
営業支援システムに大切な要件というのは他にもたくさんあります。本稿では、その中でも特に重要な5つの要件を紹介しました。それ以外の要件に関しては、社内のビジネスニーズを明確に把握した上で、営業責任者との連携を密に取り、ユーザーにとって使いやすい営業支援システムの導入を目指してみてはいかがでしょうか。
営業支援システム導入担当者にとってのお客様は、営業マンです。彼らが「導入してくれて良かった」と思うようなシステムでなければ、導入効果はないと判断していいでしょう。そのためにはユーザーへのヒアリングや試用機会を与えるなど、常にユーザーを意識した導入を進めることで、実際に利用する営業マンに受け入れられやすくする環境を整えることも大切なポイントになります。
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