リレーインタビュー 「ものづくり+IT:第1章 」

 2016.08.01  シンコム・システムズ・ジャパン

リレーインタビュー 「ものづくり+IT:第1章 」

青山和浩(あおやまかずひろ)氏

東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授

(国立大学法人)東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻教授、技術経営戦略学専攻教授(兼担)
1989年東京大学大学院 工学系研究科 修士課程修了(船舶海洋工学専攻)後、三菱重工株式会社勤務。1996年東京大学より博士号取得(工学)。同年より同校大学院 工学系研究科(船舶海洋工学専攻)専任講師。1997年助教授、2007年教授となり現在に至る。専門分野は設計工学,生産工学,システム工学,溶接工学など。

1.ものづくりを支援する情報システム

石村: 今日はお忙しいところをありがとうございます。早速ですが、先生は非常に多岐にわたるご研究をなさっていますね。これまでどのようなテーマを主に扱っていらっしゃったのかをご説明いただきたいのですが。
青山: 今までは、簡単にいうと製品の設計や製造を支援するシステムをつくる研究をやってきました。ものづくりというのは情報をつくったり使ったりする世界なんです。つまり、つくるものすべての情報を決めることです。たとえばペットボトルの蓋の内径と飲み口の外径は同じでなければなりません。当たり前のことを知った上でサイズを決めなければならない。もし忘れてしまうと不良品になってしまいます。情報を扱う側からすると、蓋を設計したら飲み口をチェックしなくちゃいけないという暗黙の情報のつながりというのがあるんです。昔はものをつくるために鑿(のみ)とか金槌とか鉋(かんな)などを使ったように、現在のものづくりにおける情報処理という取り組みには、情報システムが必要不可欠ということです。

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青山氏石村: わたしたちが知らないだけで、情報システムなしではものづくりができないということですね。
青山: 製造業といわれるところでは情報システムがないと、ものができません。技術情報や製品の設計の情報から、例えばサプライチェーンに関する情報システムもあります。でも昔は、コンピュータがなくてもものづくりはできていた。だからといって情報システムはなくてもいいんだという話にはならなくて、紙と鉛筆で指示を書いたりとか、書類をつくったりとかしていたんですね。そういう意味では情報を扱いながらものをつくっている。だけどそれは実際には表面に出てこない。裏方なんです。

石村: よくよく考えてみると、自動車をつくるにしてもものすごく情報処理がされていますよね。でもあまり知られていない世界ですね。
青山: 「どういう研究をしているんですか?」と聞かれた時に、設計を支援するシステムをつくる研究なんだよといっても、学生は「え、設計って支援しなければいけないんですか」って言う(笑)。

石村

石村: 大量生産するようなものに関しては、誤差が相当な影響を与えるのはもちろんなんですけれど、数は少なくても非常に高価なものであれば誤差がものすごいロスを生むわけですよね。お金の話だけではなくて、品質と新しい技術ということもあります。
青山: 今までは人が頭のなかでわかっていたので、何かの情報を決めると、あの情報は大丈夫かなというチェックをすればよかったんですけれど、リードタイム短縮で十分に時間がとれないとか、コスト削減のためにアウトソーシングをたくさんしてしまうとか、熟練の人が少なくなって過去の経験が十分活かされないとか、いろいろな状況が重なると、結構当たり前な、たとえば蓋を設計するには飲み口の寸法を確認しなければいけないというのが消えてしまう。それが消えない仕組みを、情報システムに入れなきゃいけない。

石村: 特に生産の部分で海外へのアウトソーシングがすごく多くなっていますから、近くにいてお願いしていた時とはやはり違いますね。
青山: たとえば日本で当たり前に期待できたことが遠く離れるとできなくなってしまうとか、そういう例はいっぱいあります。ハード的なものづくりではなくて、ソフトでも、サービスでもほとんど同じで、もっと一般的に考えてしまうと、すべて情報というのはつながっているんです。「この情報を変えればいいや」って、誰かが変えるんですけれど、それが廻り回っていろんな情報が変わってしまう。そのことを、実は知っているんだけれど忘れてしまうんです。忘れられている部分を、どのように情報システムを使って取り戻すかというのが重要なテーマです。これも支援です。支援ってけっこうたくさんあるんです。

石村: 世の中が複雑になるにつれ、人間が自分でカバーできる部分というのは製品の中において少なくなっていく。それを総合的にマネジメントして、ICTを使うことによってもれのない設計で、なおかつ品質も向上させていくための支援と考えられますね。そういう面において先生の研究ってとっても重要ですね。

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青山: 重要なんですよ(笑)。特にものづくりの情報システムというのは、かなりその言葉の捉え方自体が難しくて、たとえば計算機で車の衝突をシミュレーションするというのはそれは情報システムというかというと、言わないですよね。スーパーコンピュータを情報システムとはあまり言わないですね。シミュレーションを実行する人と、使いたい人というのが限られている。情報システムというのはいろんな部署がつながっていて、この人もうれしいし、この人もうれしい。設計の部署の人は製造の部署のためにも仕事をするし、その逆もあり得る。そんな組織をつなぐようなシステムが、情報システムです。

第2章「オブジェクト指向とものづくりの親和性」へ続く


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