キーマン対談 神奈川県知事 黒岩祐治氏(第2章)

 2016.03.02  シンコム・システムズ・ジャパン

キーマン対談 神奈川県知事 黒岩祐治氏(第2章)

黒岩祐治(くろいわ ゆうじ)氏 神奈川県知事

1954年 兵庫県神戸市に生まれる。1980年 早稲田大学政経学部卒業、同年、 (株)フジテレビジョン入社、2009年退社。 2009年 国際医療福祉大学大学院教授に就任、2011年退職。2011年 神奈川県知事に就任。


圧倒的なスピードで神奈川発のエネルギー革命

石村石村 企業ではトップがビジョンを分かりやすく伝え、その方向性さえぶれなければみんながついてくるということが一般的に定着しつつありますが、行政の方とお話していると、なかなかそうはいかないのだと思うことがあります。
黒岩 今行政に求められているのはスピードです。私はキャスターを辞めてから立候補までの1年半、政府でいろいろな審議会に入りましたが、なかなか話が前に進まないというのが実感でした。これではだめだと思って、圧倒的スピード感が大事だと言っていったら、県庁の中でスピード感を出す体制ができあがってきました。
私は今、神奈川からエネルギー革命を起こそうとしています。福島第一原発があのようなことになって、早く電力を補わなければならない。家庭での太陽光発電を一気に普及させようと、選挙戦の最中ソーラーパネルを持って歩き、これを神奈川県で4年間に200万戸分つけましょうと訴えました。200万戸というと、神奈川県の半分です。それくらいの勢いで神奈川からエネルギー革命を起こそうと言ってきたのです。すると、初登庁の前に県庁の中の組織ができていて、一気に検討が始まりました。しかし最初は、1ヵ月に1回ずつ検討会をやっていく計画が出されました。私は1週間に1回にしてほしいと言いました。夏の冷房需要に間に合わないので、すぐに審議してほしいと言ったんです。そして補正予算案がすぐに出され可決されました。これによってソーラープロジェクトが動き始めた。そうするうちに、知事連合によるソーラープロジェクトが立ち上がったりして全国的な勢いがついてきた。そのスピード感で、今動いているという感じはします。

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石村 なるほど。県の職員の方々の持っているエネルギーの向かう方向を示すことでスピード感も出たわけですね。
黒岩 一番大事なことは、みんながやる気を出すことです。僕は初登庁の時に言いました。役人って評判悪いですよと。なぜ評判が悪いかというと、いい仕事をしていたとしても何をやっているかが県民に見えないからです。メッセージ力が足りないんです。間違っていない仕事をちゃんとやるということに全力を傾けているから、それをアピールすることに気がまわらない。伝わらないから給料を減らせということになる。選挙の時にも公務員を減らせという声がありましたが、いっさい目を向けませんでした。それはこれまでさんざん行われてきましたし、今は危機だからです。危機のときの公務員魂を県民に見せてほしいと言いました。そしてソーラープロジェクトが始まったら私は外に向かって、神奈川県庁の職員はすごいんです、こんなスピード感でやっているんですと言っています。注目されるとみんなもっとがんばろうと思う。そういういい循環をまわして行くというのは大事ですよね。

石村 今、なかなか変化に対応できない、変化を嫌うという風潮がありますけれど、よく考えると変化しないということは、時代が動いている中で遅れてしまうということですよね。今の知事のお言葉を伺って、変化を起こすきっかけがあればやっぱりどんどん回るんだなというのを実感しました。東北の各行政でも一生懸命新しいことを始めていると報道され、お互いに今危機だからこういうふうに変えて行こうというのが、日本を元気にする力になるのだと思います。 それにしても、何年か前は日本は太陽光発電で一番だったはずなのにあっという間にドイツに抜かれ、いろんな国に抜かれてしまいましたね。また盛り返すにはどういうことが必要でしょうか。
黒岩: エネルギー“革命”と言っているのには訳があります。いままでは電力会社が電気をつくって送電するだけでした。これはテレビの世界と似ています。テレビが番組をつくってそれをブロードキャストといって放送し、みんな受動的に見ているその構造です。ところがインターネットというのは見ている人一人一人が自分で発信できる。これはある意味革命的な変化ですよね。エネルギーの問題でも太陽光発電のパネルがどんどん広がるのはそれに似ています。自分で作った電気を送電するんですから、ある種の双方向なんです。この流れをもっと加速させるために課題としているのは、全量買い取りです。今は余った電気を買ってもらうということはできますが、これだとあまり進まないので全量買い取りという形にすることです。今は余剰電力は住宅では1kW42円で買い取られていますが、このままのレベルで全量買い取りが少なくとも20年続けばどんどん普及します。本来なら国会はこれを審議しているはずなんです。3月11日の午前中の閣議決定で全量買い上げということが決定されたんです。本来すぐ審議しているはずだったんですが、これが本当に行われるのかどうか。これを乗り越えていけばどんどん普及すると思います。

石村: イギリスの例では、スマートメーターで様々なエネルギーのどれを使っているかを計りながら、あなたはどの時間帯にどのエネルギーを使うとこれだけのコスト削減になりますという案内をコールセンターで流しているということでした。当社ではコールセンターのシステムをアメリカで訪問看護などの分野に提供していますから、こういった部分にも生かしていけるのではないかと思います。

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黒岩 私は2~3年前から、太陽経済の会というシンクタンクのメンバーとして研究していました。19世紀は石炭経済、20世紀は石油経済、21世紀は原子力ではなくて太陽経済という認識のもとに、この太陽経済を実現していこうということでいろんなプロジェクトをやってきました。これを神奈川県でやろうとしたのがこの太陽光発電の話なのです。実は前から温めてきたものなんです。実際に、今実験的にやっているケースが山陰地方でありますね。100%ローンを組んでもらって、太陽光発電のパネルを設置し、売電収入でローンが返せるという仕組みです。1個1個発信器を付けて、ITで発電量を集約し、どこでどれだけ電気を作ったか電力会社側が全部情報を把握して公開していますが、情報を見せてあげますよというのはただの情報公開です。そういうのではなくて一人一人が自分で管理すれば、自分で節電ができますよね。

石村 そうですね。ITはそういう部分でももっと節電のお手伝いをしてかなければならないと思っています。

第3章「患者中心、県民中心の医療をITを利用して実現する」へ続く


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