リレーインタビュー 「コーチング+IT:第1章」

 2016.04.01  シンコム・システムズ・ジャパン

リレーインタビュー 「コーチング+IT:第1章」

山羽教文(やまは たかふみ)氏

株式会社FIELD OF DREAMS 代表取締役

1971年 兵庫県明石市に生まれる。1991年 早稲田大学教育学部理学科数学専修に入学。在学中はラグビー部に所属し、4年次には主将を務める(Under-23日本代表)。1995年 三井物産株式会社に入社。2000年 三井物産株式会社を退社。2003年 オハイオ州立オハイオ大学大学院スポーツ経営学修士修了。有限会社FIELD OF DREAMS(現、株式会社 FIELD OF DREAMS)を設立。2006年 早稲田大学ラグビー部セルフマネジメントコーチに就任。2009年 特定非営利活動法人FIELD OF DREAMSを設立。現在、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士後期課程に在学。

主な著書 『歩育のすすめ すべての子どもに歩く喜びを』  山村友宏・山羽教文著 社団法人日本ウオーキング協会監修 三省堂 2009年12月

1. 知識を自分で活かせるまで支援する

山羽氏

石村 山羽さんはアメリカでコーチングを学ばれたんですよね。社会に出てからなぜまた、コーチングの世界に?
山羽 学生時代にラグビーをやっていて、卒業後総合商社に就職したんですが、スポーツの中で経験したことが社会に出て同じように活かせたんです。もちろんラグビーの競技スキルは会社の中で使うことはないですが(笑)、さまざまなアプローチの仕方が似ていたんですね。たとえば、会社の中で案件をとっていく、チームを作っていくということと、ラグビーの中で、勝つため、うまくなるため、チームをまとめるためにやってきたことが一緒だと感じて。 しかし一方で、スポーツの一線で活躍した人間が、引退した後のセカンドキャリアをうまく築けていないことも目の当たりにしました。特に日本においてはスポーツでの経験をその後に活かせていない人が多いというのを実感しまして。せっかく一生懸命スポーツをやっていた人間が、他の社会で生きていくにあたって、その経験を活かしていきていけるようなスポーツ環境をつくれたらいいなと思ってアメリカに渡りました。

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石村 日本とはどういうところが違いましたか?
山羽 スポーツを通じて生きる力、自立、自律の力をどうやってつけていけるかというところにフォーカスして勉強をする中で、そういう意図をもってスポーツを教えている指導者がいたり、教え方、伝え方が明らかに違うなということを実感しました。 日本は知識を与えるのが中心ですが、むこうでは知識は自ら学んでいるのが前提で、あとは自分たちの経験だったり実際におこっていることをベースにディスカッションしたりということが中心でした。日本のような一方的に与える指導スタイルではなくて選手が自分たちで主体的に学んでいるところを見て、これがまさしくコーチングなんだと。

石村 非常に興味深いですよね。どちらがいい、悪いではなくて、主体的な人間を育てるにあたっては、受け身になってしまわざるを得ないシステムから抜け出す必要がありそうですね。たとえば私たちは、システム会社として2008年から始まった特定保健指導向けのシステムを提供しています。特定保健指導というのは、メタボリックシンドローム生活習慣病にならないように保健師や看護師、管理栄養士の方々が一般の人を対象に指導するわけですが、ITでのお手伝いのほかに、最終的には人と人のコミュニケーションが大事なんだなと強く感じています。専門職の方がもつ人を変えていく力、生活習慣を変える力を引き出す能力というのでしょうか、そういうものが重要だというお話も現場の方から聞いています。
山羽 私も日本に帰ってきてから健康分野でのコーチング、保健師や看護師、管理栄養士の方々へのコーチングスキルの提供にも関わってきました。基本的にはコーチングというのはコミュニケーションの方法なので、スポーツであろうと保健分野であろうと一緒なんです。 クライアントとコーチが同じ目線で一緒になってクライアントの目標達成をサポートするのがコーチングですが、日本で難しかったのはどうしても教える人と学ぶ人、上下関係の世界になってしまうことですね。特に医療の世界では、患者と医師、患者と看護師が上下関係になりがちで、壁ができてしまいます。

石村

石村 たしかに会社の中でも上司がコーチングしたのではどうしてもだめなんですよね。上司には別に「上から目線」の気持ちがなくても受ける側がそういう気持ちになってしまうんですね。日本古来の風土はコーチングよりもティーチングですよね。
山羽 そうなんです。でもティーチングが全てだめかというとそうではなくて、対象者がその分野において未熟な場合は知識や理論を身につけなければならないので、まずティーチングから入ります。上下関係があるとそれを学んだあといつまでたってもティーチングになってしまうのが問題なんですね。知識の使い方を本人が考えたり経験したりできないので、独り立ち、自律できないということになる。 私が一番力を入れているのは実はこの部分なんです。3ヵ月たったらおしまいでは意味がなくて、自分でそのあとも継続していけるかどうかはコーチングにかかっているんですね。

石村 なるほど。受け入れる土壌づくりにはティーチングは適していて、その先ですね。今、特定保健指導が始まって2年が経って、メタボリックシンドロームという言葉や、生活習慣改善の意識というのはだいぶ一般の人たちに浸透してきたと思うんです。そろそろ次のステップに行くべき時ですよね。ITはある意味、ティーチングまではお手伝いができるんですが、コーチングや実際の治療の部分など最終的に人がやらなければいけないことは当然あるわけです。人が関わる時間を増やすことが最良の医療を与えていくことになるのではないかなと思っています。人と対面する時間をつくり出すためのITでもあるわけです。 ですからITを使うことが目標ではなくて、ITはあくまでも支援するものなので、その先、ITを使って何をするのかを見ていかなければならない。その先に、じっくり対面で自立・自律のための支援の時間を増やすという目標があるわけです。

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山羽そうですね、知識の部分はITで十分対応が可能というか、むしろそちらの方が効率的です。しかしITでは人の気持ちを変えることは難しい。人間は基本的に怠け者なので、継続するということが非常に苦手なんですね。そういったところを継続していこうとすると誰かのサポート、家族だったり地域の人だったり、そういった支援者がいると継続しやすくなると。まさしくティーチングの部分ではITが、それを活用する人の部分ではコーチングが活きてくるんじゃないかなと思っています。

石村 いろいろな会社の保健師、看護師、管理栄養士の方々にお会いするんですが、みなさん元気でとてもコミュニケーション能力がおありになる。彼女、彼らがここでコーチングを身につけられたら日本にとって大きな力になっていくんじゃないかなと思いますね。山羽さんにはこれからもがんばってこの仕事を大きく伸ばしていただきたいですね。

第2章「介護予防にも活かせるコーチングとIT」へ続く


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