リレーインタビュー「ものづくり+IT:第2章」

 2016.08.02  シンコム・システムズ・ジャパン

リレーインタビュー「ものづくり+IT:第2章」

青山和浩(あおやまかずひろ)氏

東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授

(国立大学法人)東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻教授、技術経営戦略学専攻教授(兼担)
1989年東京大学大学院 工学系研究科 修士課程修了(船舶海洋工学専攻)後、三菱重工株式会社勤務。1996年東京大学より博士号取得(工学)。同年より同校大学院 工学系研究科

2.オブジェクト指向とものづくりの親和性

石村: 世の中にはいろんなものづくりのためのパッケージがあります。特にERPのようなものはだいぶ一般的になってきたわけですけれど、ワールドワイドで考えても、新しい支援システムを一から開発されるということで、先生がなさっているような研究の事例がないわけですよね。それをつくる道具としてまずオブジェクト指向というのが前から出ていますね。
青山: 支援システムをつくるという観点でオブジェクト指向のメリットを整理すると、まず情報の定義が非常に高度なレベルでできるということです。たとえば船をつくる場合は大きさ、素材、部品といろいろな情報がある。そんな中で、この部品とこの部品は何が違うかをきっちりと定義しなければいけない。表面的な情報だけではなくて、情報の対象や、他の情報との関連、情報をつくり出して使う場面までを含めて定義しなくてはらないんです。それがオブジェクト指向を使うとかなり高レベルに定義できると思うんです。情報システムをつくる上では情報の意味を考えることの方が重要で、プログラミングはその次なんです。考えた意味をプログラムで実現するのは単なる手段でしかありません。その際に英語で書くのが書きやすいか、日本語か中国語か、という問題で、どんなプログラミング言語が一番書きやすいか選んだ方がいい。要はオブジェクト指向と表現方法の組み合わせです。考えて表現してまた表現したものを使って考える。できるだけ考えることと表現することの境界がない方がいいんです。

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青山氏石村: 客観的に考えたことが表現できるというのがいいわけですよね。
青山: ぼやっとしたものが表現できて、表現できたものを使ってまた考えることができる。思ったことを文章でメモ書きすると、また考えますよね。初期の時代はそういったことができるのはSmalltalkしかなかったんですけれど、結局一番適していたんです。今もおそらくそうですよね。なので今もずっと使っています。

石村: Smalltalkは、今は弊社の製品ですが、海外の事例を見ても戦略的にある少数の方々がものごとを設計するときに使われて、できあがったものを多くの人が使うというものとして使われています。
青山: 大量なデータを効率よく処理するだけであればSmalltalkよりももっと適したものがあって、複雑でよく分からないんだけれどシステムをつくらなければならないという場合、整理しながらつくるのにSmalltalkは適しています。ここがまた難しいんですが、真面目な学生ほど「システムをつくる前に整理すればいいじゃないですか」という。でも整理してからつくれるくらいだったらとっくにやってるんですよね。

石村: ものづくりって結局、最終的には試行錯誤ですよね。そこがないと開発ができないですよね。
青山: それぞれの企業に適したものづくりに必要な支援システムは、実はほとんど既存のものもなければ具体的な要求もありません。自分たちでイメージをつくっていくしかないんです。イメージも最初からつくれるのではなくて、ヒアリングをしながらどういうシステムが必要なのか、どういうシステムが心地よいのかというのを探っていかなければならない。そうしてイメージを形にして行くのが研究のプロセスになっています。結局、かっこ悪くいうと手探りで研究しているんですけれど、ひとつひとつ問題をほぐしながら整理している、つまり因数分解している。Smalltalkは因数分解しやすいんです。よく使われるマインドマップなんかも因数分解なので、マインドマップみたいな感じかなと思いますね。

石村

石村: マインドマップみたいとおっしゃっていただくと、とっても分かりやすいです。先生はこれからどういうことをさらに深めていきたいとお考えですか?
青山: 今、いろいろ考えていて、キーワードはマネジメントにしようと思っているところです。マネジメントというのは、いろいろな意味がある。組織やプロジェクト、製品の開発や設計にもマネジメントが必要なので、ベースにしてやっていこうと考えています。それから、開発や設計を支援する際に何をもって支援するかを具体化したいと思っています。ひとつ、「見える化」っていうちょっと古くなってしまった言葉かもしれないですが、ものづくりにおける見える化というのは何かということを考えています。まず「何を」、「どのように」見える化して、見えたら「何を決定するか」という一連の流れが必要です。ベテランになるということは見えることだという仮説で、ではベテランとは何が見えているのか。今が見えるだけでも大変ですが、たとえば過去に同じ状況だったらこういうトラブルがあったというのも、このままいくと将来どうなるよというのも見える化ですよね。それができると組織としてどう変わるかというのを考えていきたいんです。

石村: 過去・未来を見るというのは、整理された情報を人間の思考を通すことによって見えてくるものですよね。そのきっかけを与えられるシステムづくりができればいいですね。今、ICTや情報システムが答えを出してくれるものだという誤解が蔓延しています。本来情報システムというのは解まで出してはくれないものです。出す部分ももちろんありますけれど、それは判断をするための材料であって最終的な判断をするのはやっぱり人間の思考だと思うんです。
青山: 私も学会などで機会があるときには必ず言うようにしています。計算機が得意とするのは計算スピードとたくさん記憶できるということにすぎないので、意思決定は人間がしなきゃいけないはずなんです。つねに計算機と人間が対等の立場で対話をしながら、人が意思決定するんです。アランケイのダイナブック構想を学生の頃に読んですごいなと思ったのは、ダイナブックと子どもが対話しながらいろんな知識を吸収して成長していくというところです。子どもだけではなくて、設計者も成長しなければなりませんよね。設計者も自分が抱えている問題を解決しながら成長していくという。情報システムはこうあるべきです。やっぱり一番楽しいのは自分が成長していくことでしょう。それに情報システムがどう寄与して行くかそれが一番重要かなと。

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石村: Smalltalkはダイナブック構想の時からある言語で、ソフトウエアとしてはずっとその流れを汲んで続いてきました。ようやくiPadなどのハードができてきて、これが実現できる世界ができたのかなというふうにちょっと思っているんです。
青山: 今から40年前の構想は端末+言語系といいますか、環境系もワンセットです。時代はオブジェクト指向の世界にはいっているので、それはもう実現されているといえばされているんですけれど

石村: シンコムではSmalltalkを使っている方々の支援をしていきたいということで、ユーザー会の方々にSmalltalkの入った専用のサイトをご提供しています。その中でみなさんが試行錯誤しながら共有して使えるような作品を提供していこうと思っています。ユーザー会を運営してくださっている方は日本でもスーパープログラマーと言われている方です。 大きなシステムを大勢でつくるというところから、特定の分野に特化したものを戦略的にシステム化しなければいけない時代に変わってきています。さまざまな分野での課題解決マネジメントに、今後は個人の能力がより大きくかかわってくるんだろうと思うんです。個人の能力を最大限に活かすノウハウを、多くの方が使えるようなものになる支援をしたいという考えでおります。青山先生、本日はありがとうございました。

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