リレーインタビュー「メディカル+IT:第1章」

 2016.05.01  シンコム・システムズ・ジャパン

リレーインタビュー「メディカル+IT:第1章」

小林孝弘(こばやしたかひろ)氏

小原メディカルサービス 代表取締役社長

1979年生まれ。2004年3月 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。学生時代より同社での医療情報システム開発に従事。独自の電子カルテ・オーダリング・医事会計システムOmega1の開発、導入に携わる。その後2年間商社に勤務したのち復帰、代表就任。現在、国際医療福祉大学大学院の博士課程に在籍中。同社は、2001年11月、医療法人財団圭友会小原病院の医療事務、情報システム、清掃部門が独立し設立。

1. モノづくりで人の役に立ちたい

小林氏

石村: 小林さんの経歴をお伺いすると、一般企業に勤められたあとに今の小原メディカルさんに戻られたというふうにお伺いしていますが、そもそも医療系に入られたきっかけは何だったんでしょう?
小林: そうですね、もともとはソフトウエア工学を勉強していた大学4年生の時に、人の紹介で今の小原メディカルサービスと小原病院でアルバイトをしたのがきっかけだったんです。今思えば偶然なのかなという気がしてしまいます。私自身モノづくりをして人の役に立ちたいと思っていまして、ちょうどその頃電子カルテというものがこれから始まろうとしていたんです。非常に魅力的に思えた記憶があります。覚えたてのシステムの知識をどこかで活かしたい。そしてそこに医療があった。じゃ、ここでがんばってみようと。

石村: かなりお若いときから思い入れが強かったというのは小林さんの何かの経験から来るのですか? それとも性格的な面があるのでしょうか?
小林: 負けず嫌いという面はありますね(笑)。モノづくりがしたい一心で、大学でソフトウエア工学を選んだ時に、自分の無力さを思い知りました。そこで絶対負けたくないという気持ちがでてきて、超一流のスキルを持った人たちが集まっている中で、自分はどこだったら主体性が発揮できるか、この人たちに勝てるんだろうかという想いがいつも頭の片隅にありました。

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石村: 私も無力感という意味では、プログラムを書き始めた時に嫌というほど味わいましたね。自分では絶対正しいものを作ったつもりなんですね。ところがマシンにいれてコンパイルすると、山ほどエラーがでて(笑)、本当にああ、無力だなと。これはなかなか人間の付き合いでは出てこない種類のものなんです。機械にNoと言われてしまったら絶対Noで、ごめんなさいといっても機械はそれを修正してくれないんですね。ある意味自分は完璧だと思っても間違いがあると感じるいい経験でした。
小林: その点ではわりと通ずるものがありまして、私もバリバリつくる人間だったんですけれど、限界を感じたんです。私の感じた限界というのはつくっている“だけ”ではだめということです。どこまでいっても手段というのはあるんですね。手段を手段として突き詰めていって、高性能にしていくことはできます。でも自分はユーザーではないので何がいいか分からない。電子カルテをつくった時にも感じた無力感というのが実はまさにそこで、自分は医師ではないので、医師が使う画面について、やっぱりいい示唆を与えられないんですね。

石村: 最初に小原病院で開発なさったOmega 1というのはどういうものだったのですか?
小林: オーダリングと医事会計機能を備えた電子カルテで、完全に小原病院のためだけに作られたシステムです。現場の医療スタッフの話をひたすら聞いてつくりました。今も元気に動いています。ひと通り導入して、外来に入ったタイミングで一旦外に出ました。区切りがいいかなということで。

石村: それで、外の世界はいかがでしたか?
小林: 選んだのはできるだけいろいろなところが見られる商社でした。そこで働くうちに、やはり自分の強みはシステム開発だからこれを活かそう、医療にそれを活かしたいんだという想いがまたふつふつと湧いてきたんです。でも今までと同じように電子カルテでは結果が見えている。じゃあどうしたらいいだろうというのを考えた時に、医療をシステム開発ではない視点から見るようになったんです。そして何が見えてきたかというと、医療というのは単純な医師を頂点としたひとつの塊ではなくて、治療、医学というものがあって、それがどうやら医療のコンテンツであるらしい。それをうまく患者さんに届けるためのインフラがあるということに気がついたんですね。医療というのは比較的閉じた世界なので、インフラの部分も医師がやっていることが多々あったわけです。でも医療費が逼迫してきて、きちんと医学の部分とインフラの部分を分けてうまくやっていかなければならなくなったというのが見えてきた。その時に自分はインフラをつくることで医療に対して主体的に関われるということが分かった。それでまた医療の世界に戻ったわけですが、その流れでどうせならインフラをきちんと勉強して、きちんと勉強した自分がユーザーとしてよいと思えるシステムをつくりたいと思って大学院に進もうと思ったわけです。

石村

石村: それであたらめて医療に関連がある国際医療福祉大学の大学院に進学なさったというわけなんですね。
小林: そういうことですね。

石村: 小林さんとお話をさせていただくのがとっても楽しい理由が分かりました。いわゆる技術者ということではなくて非常に幅も広いし、考え方に柔軟性もあるし、目指しているものがモノづくりなんですけれど、いわゆるプログラミングだけではない。システムをつくるということだけではないという、それが伝わってくるんです。
小林: ありがとうございます。

石村: 先日、会社の研修でオーストラリアに行ってきたんですが、その中でサーバント・リーダーシップという話がありました。これは非常に古い理論なんです。1970年代に本が出ています。どういうことをいっているかというと、リーダーになる人には2つのタイプがあって、エネルギッシュにどんどん命令をしてぐいぐい引っ張っていくタイプの人と、そうではなくて自分はみなさんへの奉仕者だという自覚をしてリーダーシップをとっていく人という、その2種類だということが書かれています。サーバント・リーダーシップというのは後者です。 考えてみれば、例えばITの世界でもプロジェクトがあったり、こういう新しいシステムを作りたいというお客様の目標があって、私たちはそれをどう支援したらうまくいくのかと考える、要は奉仕なんですね。そういうところに立ち戻って考えますと、奉仕の心というのがしっかりしていないといい結果がでないのではないかと、知れば知るほど思うところがありました。
小林: システムを開発するということはまさにこういうことだと思います。

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石村: 小林さんのモノへの取り組み方がそうであるということです。システム開発に対する考え方が、もうサーバント・リーダーシップの流れを汲んでいる。そうでないと、医療の問題点がなかなか見えてこないということは、私が実感しているところです。サーバント・リーダーシップは人との共感がキーワードにあります。小林さん自身がユーザーになって共感されて、今までの経験値と、持っていらっしゃる可能性とか能力が次の段階に発展していっているのだと思います。特に医療において共感というのはいろいろな意味で非常に重要ですね。
小林: 私にできるのはシステムづくりなので、そういう面から今後も医療に貢献していきたいですね。

第2章「これからの新しい医療のITとは」へ続く


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